37.殺す気?
「で、できましたわ!」
今晩は野宿をすることにした一行は、早速晩御飯を手早く作っていた。
今日の晩御飯の当番は、ジェイドとナタリアだ。
ジェイドの作った献立は卵丼だ。
「ジェイドのはどう見たって卵丼だよ、な?」
「そうですよ。これがカレーライスに見えますか?」
「……どう見たって卵丼だな」
ごくごく普通で平凡な卵丼を目の前に、改めて確認するルークとガイ。
ごくごく普通で平凡な卵丼を眼に焼き付けた後、
ナタリアが作った料理にスッと目線を移す。
「………」
「………」
「どうなさったの? 2人して黙ってしまわれて」
目線先にはナタリアの“料理”があった。
あるにはあるが、その物体はどうしてこうなったのかスライム状だった。
“でろーん”と、とろけているその料理と思われる物体は時折震えているようにも見える。
もう食べ物じゃなく生き物だった。
「……ナタリア、非常に言いにくいんだがこれは何なんだい?」
「まぁ、これはどう見たってオニオンスープに決まっていますわ」
「(決まってるのか……)」
悪いが、どうみてもオニオンスープに見えない。
「いやぁ、濃厚なスープですね〜」
“でろ−ん”としているのを見たジェイドがにこやかに笑いながら1言。
「うわぁ、どうやったらこんなのが出来るのか不思議だよぅ」
パーティの中で料理上手な部類に入るアニスが頬を引き攣らせながら1言。
「みゅ〜、何だかこっち見てますの〜」
どうやらオニオンスープらしい物体には眼まであるらしい。
「………(可愛くないわ)」
スライム状のオニオンスープは不細工だった。
「それでは早速食べましょうか」
「そ、そうだな。」
ジェイドがお箸を持ちながら手を合わせる。
それに習い、皆臨戦態勢に入った。
「ここはやっぱりルークから行くべきだよな」
「あ、汚ねぇぞガイ」
オニオンスープは今までのどの敵よりもある意味強敵だった。
ガイはジェイドが作った卵丼を口に運びながら小声で言う。
「そう言い争うなら2人で仲良く食べればいいと思いますよ」
「それいいかも〜」
じゃあ2人共、頑張って☆っとアニスがお椀に分けられ
分裂したオニオンスープをガイとルークの前に置く。
何気にアニスとジェイドの分の御椀まで2人の前に並んだ。
それを見たナタリアは……
「まぁ、ルークとガイはそんなにオニオンスープがお好きですの? まだお代わりはありますわよ」
と脇に置いてあった大きな鍋を取り出し、お玉でかき混ぜる。
スライム状のスープが何故か唸る。
唸っている物体を見て2人は嫌な汗をかく。
「い、いや。そういう訳じゃ……」
「まぁ、なんですの?」
このままではマズイと思ったルークが意見しようとした瞬間。
「いっ……」
「(おい屑! ナタリアの料理が食べられないとは言わせねぇ。屑は屑らしくさっさと食え!!)」
いきなりのアッシュ乱入。
「ま、いってぇ……」
どうやらアッシュは一部始終ルークの目を通して見ていたらしい。
頭の中でガンガンと怒鳴られ、もう自棄だ! とばかりにお椀に手を伸ばすルーク。
その様子にジェイド・アニス・ティア・ガイが一斉にルークの行動に釘付けになった。
その後の展開は誰も知らない。
* * * * * * * * * * * *
また違う視点の『殺す気?』いかがでしたでしょうか〜?
何だか毎回ハチャメチャだね、いいか。
アッシュはナタリア一筋だからきっとルークが食べなかったら頭の中で怒鳴ると思う。
どうなったかは想像にお任せします。
UP時期:2006/11/17