星が綺麗な夜に
グランドフォールを阻止すべく、リッド達は旅を続けていた。
そんな道中、ファラはあることに気が付き夕食後の和やかな雰囲気の中、ポツリと呟いた。
「最近食料の減りが早いんだけど、リッド知らない?」
焚き火を囲いながらいつものようにダラダラとしていたリッドは、ファラの言葉に素気なく答える。
「なんで俺に聞くんだよ」
リッドにしてみれば明らかに疑われている。自分ではないのに疑われるのは心外だった。
「バイバ! リッド盗み食いか!!」
「情けないな」
そこに追い討ちをかけるようにメルディとキールが突っ込む。
「ちょっと待て、俺がやったって決定か!? 証拠を見せろ、証拠を」
「その立派な腹が証拠だ」
キールは本を読む目を放さず、リッドの腹を指差した。
リッドの腹、見事に割れた腹筋。
それに引き換えキールは……そういえば作者はキールの腹を見たことが無かった(当たり前だよ)
いや、きっとガリガリに違いない。あれで割れてたら犯罪だね(頷)
「腹は関係ないだろ」
腹を指摘されたリッドは、当たり前だが憤慨する。
確かに少し膨れてはいるが、食後だから当たり前だろう。
「ちょっと待ってってば、私はリッドに聞いただけで犯人とは思ってないよ」
「俺に聞いた時点で疑ってるだろ」
思いっきり気分を害したリッドはファラにまで逆切れし始めた。
まぁ、逆切れなんか誰にもするもんではないですが……
「私は、食料のことならリッドに聞けば分かるんじゃないかな〜って思っただけだよ」
「食料=リッド=常に腹ペコ〜」
「的確な公式だな」
「お前らの俺像って一体……」
「まぁまぁ、リッドもそんなに落ち込まないでよ」
以外に傷ついたのであろうリッドの背中を思いっきり叩いた。
不意にくらってリッドが少しよろける。
「とにかく、もう食料がないの。明日の朝ごはんの分で終わり」
「バイバ! 明日のお昼はゴハン抜きか!?」
“がーん”と言う効果音が似合いそうな顔をするメルディ。
メルディも十分“腹ペコ”だった。
「近くに町は無いのか? まぁ、この様子じゃあった方が奇跡に近いが……」
「そ、そうだねー」
“この様子”と言うと。
ファラ達が今いる所は、無人島だった。
周りは海ばっかり、少々エアリアルボードに乗って遠くまで来すぎてしまったのだ。
ここがどこだか見当もつかない。
「いつもなら出発前に準備してたのに、今回はなんだか急いで出てきちゃったから……」
「この気候からしてシャンバールは近いと思うんだが……」
今は火の晶霊イフリートと契約するべく、暑い地方を探している最中だ。
東方面にひたすら飛んでいた一行だが、日も暮れてきたので近くの無人島でキャンプをすることになったのだ。
「そうだね、結構暖かくなってきたから近いかも。うん、イケる、イケる!」
「話がひと段落ついたらな寝ようぜ、明日のとこは明日考えればいいだろ?」
計画性の無いリッドは早くも就寝モードだ。
大きな欠伸をして“お休み〜”と言いながらさっさとテントの中に入っていった。
「そうだな〜明るくなればこの島のこともきっと分かるな、果物があるかもしれないよぅ♪」
「メルディにしては珍しくまともな意見だな、その通りだ」
キールは相変わらず本を読んでいたが話はちゃんと聞いているらしい。
器用だね。
「っで、キールはまだ寝ないの? リッドは早くも熟睡らいいけど」
テントの中からは早くもリッドの威勢のいい鼾(いびき)が聞こえてきていた。
いつもながら、五月蠅い。
「……僕にはまだやる事があるからな」
鼾を聞いたキールは少し眉をひそめはしたが、すぐに本に意識を集中し始める。
リッドの鼾には皆慣れっこになりつつあった。
「キールもちゃんと寝るんだよ? 身体壊したら勉強も出来なくなっちゃうよ」
「そうよ! キールが倒れたらメルディ凄く心配」
こう言われたらキールもあまり逆らえない。
「あぁ、肝に銘じておくさ」
本で顔を隠しながら素っ気無く答えるキールだが、顔には笑みが浮かんでいる。
内心では結構嬉しいに違いない。
「じゃ、私達も寝よっか。明日はきっと大変だよ?」
「はいな! メルディおねむよ〜」
メルディに手を伸ばすファラの手をメルディは掴んで立ち上がった。
そして、目を擦りながらファラに連れられてテントに入っていった。
「……ふぅ」
キールは溜息をした。
ちなみにファラ達の相手が疲れた。という訳ではない。
「あ、そうだ。キール!」
さっき寝るために入ったファラガテントからひょっこり顔を出す。
呼ばれたキールは反射的に顔を上げた。
さっきの溜息はひと段落ついた“間”だ。
「どうした、ファラ? 何か忘れたのか?」
ファラが何か忘れたと思ったキールは、さっきファラが座っていた周辺に目線を移した。
それらしいものは何も無い。
「違う違う」
ファラは優しく笑うと焚き火を指差した。
「ミルクはやかんの中に入れてあるからね、夜食はキールの横だよ」
「え、あ、あぁ。ありがとう」
やかんには気が付いていたキールだったが夜食には気が付いていなかった。
もう少しで本の下敷きにするところだった。
綺麗に包まれた夜食らしいものを手に取りあけてみる。
サンドイッチが入っていた。
「じゃ、お休み〜」
「お休み」
ファラは手を振りながら再びテントの中に戻っていった。
キールはマグカップと手に持つと、やかんに入ったミルクを注ぐ。
白い暖かそうな湯気が立ち上る。
「……………………」
キールはサインドイッチを1口食べると、再び目線を本にうつし、黙々と本を読み出した。
* * * * * * * * * *
「ファラ〜」
「どうしたの、メルディ?」
寝袋に入ったメルディがファラの方をニコニコしながら見ている。
ファラもつられて笑いながら聞き返した。
「明日も晴れるといいな♪」
「そうだね、きっといい天気だよ」
キールの上の空には、雲1つ無く。
星に彩られたセレスティアが映っている。
明日もきっといい天気に違いない。
〜後書き〜
書き終えて始めに思ったこと。
「あれ、これってメルディ主役じゃなかったっけ?」
いつの間にかキールが主役っぽくなってました。
キールが主役多いなぁ〜……(爆)
そんな感じの津名です。(どんな感じだよ)
メルディが主役で書いたつもりなんですが、いつの間にやら乗っ取られました。(爆)
次こそメルディ主役で!
書きたいネタがあるので。
始めは同じ感じで始まるかもしれませんが……(爆)
今回は旅の最中って言う設定です。
前回は救った後だったんですが。
昨日、更新予定に書いて、さっき消してきたので凄い予告が短かったんですが。
当初は「遭難」って言う題名でした。
んで、次が「キャンプ」。
そして、「星が綺麗な夜に。」になりました。
遭難もキャンプもしっくり来なかったので、変更〜(爆)
毎回こんな感じですが、楽しんでいただければが嬉しいです。
今回もここまで読んでくれた方、本当にありがとうございました。
UP時期:2005/10/30