食料消失事件 解決ファイル
このお話は、リッド達一行がグランドフォールを止める為に各地の晶霊を探していた時のお話……
「あっ、もう食料がないよ」
ファラは食料が入っている袋を逆さにしながら皆に聞こえるように叫んだ。
逆さまにした袋からは最後の僅かな食料が転がり落ちる。
「狽ワたか、またなのか!?」
間髪いれずリッドが突っ込んだ、流石2回目。
しかも予告と同じ始まり方だった。(最悪)
でも今回は少し違〜う!!
「しょうがないよぅ、前回はキールが乗っ取ってメルディ活躍できなかったからなー」
「計画が甘かった作者が悪い」
転がり出た食糧を袋に戻すファラ。
毎度本を片手に黙々と読書をしているキール、毎度ながら何を読んでいるのか。
「前も、と言うことは前にもあったのですか?」
「あぁ、これで2回目だ」
やかましい主パーティに加え今回はチャットがいたりいなかったり。
「居ますから」
鋭い突っ込みをどうも。
「僕はやかましくなどないけどな」
「メルディも〜♪」
まぁ特に『リッド』とかは言いませんけど、無視して話を続けます。
今回は目指せ予定通り。
「じゃ、気を取り直してテイク2いくよ〜 うん、イケるイケる♪」
「テイク2って……」
(↓テイク2)
このお話は、リッド達一行がグランドフォールを止める為に各地の晶霊を探していた時のお話……(テイク2)
「あっ、もう食料がないな〜」
「今度はメルディかぃ」
メルディは食料が入っている袋を逆さにしながら皆に聞こえるように叫んだ。
リッドはこの際無視。
「そういえば、中身が少なかった様な。リッド知らな……」
「ちょーーーと待て、これは前回と同じ流れだろ」
「あ、いけない! これ前回の台本だった、ごめんごめん」
うっかりうっかりと言わんばかりに頭に手を当てて笑うファラ。
うっかりに見えない。
「もう気を通りなおすのも面倒、話進めるな〜」
毎度本を片手に黙々と読書をしているキール、毎度ながら何を読んでいるのか。
「いきなり飛んだな、おぃ」
「食料がないとは本当ですか?」
「はいな! もうすっかり〜♪ どっか近くに町はないか?」
「明るく言うことではないでしょう」
メルディが明るく言う中、やはりキールは読書に没頭中だ。
しつこいが、一体何を読んでいるのか。
「ここら辺に町ですか? そうですね、この近くだと……」
「話の流れ的にはないような気がしてならないが」
「…………ないですね」
チャットが地図を広げて探して見たものの、キールが言うように近くには街はない模様。
まぁ、当たり前ですが(最悪)
近くに街がないことを確認したチャットは早々(そうそう)と地図を片付け始めた。
にしても、キールはさっきから一体何を読んでいるのか。
「……さっきから作者が描写を使って無言で訴えてるよぅ」
「あぁ、あれは誰かに聞けと言いたいのか」
「そうらしいですね。メルディさん、聞いてあげてください」
思いのほか大きかった地図に苦戦しつつ、何とか地図を巻き終わったチャットは、
さも当然。という感じで話をメルディに振った。
「はいな〜 メルディにお任せあれ♪」
チャットがさらっとメルディに頼むと、メルディはいつもの通りに元気よく返事を返した。
キールが『な、何でメルディなんだ!』とか喚いている様な気もしないでもないが、無視。(最悪)
「キールは一体何を読んでるよぅ?」
「ぼ、僕が今読んでいるのは、だな……」
「エロ本か?」
まだ、動悸が治まらないキールにリッドがなにやら本を片手に突っ込んだ。
本の題名は……汚くて見えない。
「何でそんな答えが出て来るんだ」
キールが眉間にシワを作る。明らかに怒っている。
「いや、これに書いてあったかr……」
「Σバイバ! キールも某召喚士みたいなピンナップ本ついに装備か!?」
「僕の武器は杖だ」
「キールも男の子だもん! 皆突っ込んじゃ駄目だよ?」
ファラが小さい子供に言い聞かせるようにチャットとメルディ等に注意する。
「なんでボクにまで言うんですかっ!」
「チャットもお子様〜」
『も』というあたりメルディは自分もお子様ということを自覚しているのだろうか……
「メルディさん、あなたには言われたくありません!」
「まぁ、気を取り直して。キールは何読んでるの?」
「……推理小説だが」
眉間にシワを作ったままのキールが短く答えた。
まだ怒ってるよ、この人。
「推理小説? なんかつまんなそうなの読んでるんだな〜」
「いや、これが結構面白い。スコールが去ったある町のゴミ捨て場で女性の遺体が発見されたんだ、
その女性は最近莫大な遺産を相続した未亡人ジュリアと判明して……」
自慢げに粗筋を話し始めるキール。
そんなキールを見たリッドとファラが1言。
「未亡人、ねぇ……」
「キールってば……そうだったの」
リッドは意味ありげな視線でキールを見、ファラはというと、知らなかった! と口に手を当てて驚いた。
「なんでそういう思考が……」
キールは返す言葉を失った。
というか、返す言葉が無いほど呆れ、うな垂れた。
キールは『未亡人がお好き?』の称号を手に入れた☆(いらねぇ)
「そういう思考とはなにか?」
「う〜ん。メルディは知らなくていいからね〜」
「もう言うのも面倒になりつつありますが、話しがズレてますよー」
チャットが、もうどうにでもなれという感じで、頬杖を付きながら言う。
「とにかく推理小説か〜♪ 追い詰める探偵、追い詰められる犯人……」
…………………。
そう言うと、急に考え込むメルディ。
急に黙るメルディに気が付いた一同は、無意識にメルディに視線を集める。
「はいな! メルディがこの事件が犯人逮捕します!」
「メルディさん、イキナリですね」
この状況にいまいち慣れてないチャットが突っ込む。
ちなみに、他の3人はメルディのいきなりの発想には慣れっこだった(爆)
「容疑者4名、アリバイ調査開始します!」
「何で僕とファラも容疑者に入ってるんだ……」
「う〜ん、とりあえず私は無実だから」
「あなた方、それで良いんですか……」
キールは少々不満そうだが、ファラは自分は無実だから強気だ。
チャットはというと、不思議な人達を子分にしたことを少し後悔した。
「この事件、メルディが解決してみせるな。ガレノスが名にかけてっ!」
「なんですか、そのフレーズは」
いやいや、著作権の関係上言えません(意味ないよ)。
* * * * * * * * * * *
「容疑者1、リッドであえ〜」
「で、であえ……?」
火を囲んで円になった一同。
その円のすぐ脇で、メルディがペンと紙を持ってリッドと向かい合って座る。
まさに『取調室』状態。
「被害者は食料袋在住の食料A、8人大家族の大黒柱」
「なんだよその設定は……」
しまいにゃ勝手に被害者食料Aの細かな設定まで作るメルディ。
芸が細かいというかなんと言うか。
「奥さんは食料B、夫の事を心底思いやるやさしい奥さん!
子供食料Dは今年世にいうお受験戦争真っ只中」
「それはなんというか……」
リッドはどんどん、食料Aに同情していく。
「しねぇよ」
ちっ、しないらしいです。
そんなことを言ってるうちに話は確信に。
「そんな優しい食料Aを、リッドは食べたんだな〜」
世間話のノリで確信を切り出すメルディ。
ってか被害者、食料Aって……既に人じゃない。
「すいません、空腹に耐えかねて……って、食ってねぇよ!」
なんだかさらっと直球で聞かれたので、冤罪なのに認めそうになるリッド。
「リッド、まぁこれでも食べて落ち着くがいいな」
メルディがどこからともなくドンッとリッドの前にどんぶりを置いた。
取調べといえば、やっぱりコレ必要不可欠。
「……こ、これは!!」
早速目の前に置かれたどんぶりに手を伸ばし、パカッとふたを開けたリッドが見たものとは……
「……クキュ?」
「メルディが自信作クィッキー丼だな、外はふかふか、中は身がしまっててとってもジュー……」
「買Wューシーなのか!? ってかクィッキーって食用だったのか?」
どんぶりの中で丸くなりながら居眠りでもしていたのか、クィッキーは状況をよく分かってないようだ。
眠たそうに目を擦ると、どんぶりからのそっと脱出した。
クィッキー、軽やかさは一体どこに行ってしまったんだ。眠たいだけとかだろうか?
クィッキーが脱出した後で、ぎゃぁあ―――っ!! とチャットが叫ぶ、叫びまくる。
「分かんないな、リッドは食べたこと無いから知らないだけ」
「柏Hべたことあるのか!?」
「……まだメルディも食べたことないよぅ」
でも美味しいかもしれないな。と、リッド達に背を向けて座っているクィッキーに目を向ける。
まさかクィッキーも主人に生命を脅かされる日が来るとは思ってもおるまい。
メルディがじーっと見てるいると、クィッキーはしきりに周りを気にしだした。
野生の勘が早くも何か嫌なものを感知したようだ。
「……もう帰ってもいいか、メルディ」
流石のリッドも全体からお疲れモードオーラが漂う。
メルディはやはり(色んな意味で)強力だった。
* * * * * * * * *
「続いて容疑者2、キールかめん〜」
「か、かめん……? それは『かもん』といいたいのかメルディ」
「イチャくつなら他でやるように」
「と言うかメルディ、そんな単語どこで覚えてきたの……」
あきれ果てながらも間違いを指摘する律儀なキールに、2人に茶々を入れるリッド。
そんな主メンバーについていけてないチャット。
ついていけないと言うかなんと言うか。“クィッキーの相手に必死だった。”
「とにかく、はじめるな。キールが犯人ですか?」
今回もなんとも直球だった。
「それは100%ありえないな、僕は食が細いんだ」
「だよな〜って訳で次ファラよぅ」
「って、キールの取調べもう終わりかよ!? ちょっと早過ぎるだろ?」
明らかにリッドとキールの取調べの所有時間が違いすぎる。
台詞18と5の差は大きい。
「…………。気のせいだよ、リッド。気にしたら負けよ!」
「ファラ、何だよその『あなたの日頃の行いの差なのよ』的な眼差しは」
ファラの眼差しは正直だった。
「リッド、そこ突っ込んじゃ駄目だな〜、ファラが折角目を逸らしてるのに」
「メルディ、そういう問題でもないと思うぞ」
「なんだか、根本的に、違う、気がします」
クィッキーを何とか餌で遠ざけたチャットが荒い呼吸を繰り返しながら突っ込んだ。
* * * * * * * * *
「結局リッド以外は白か〜」
メルディが『もう凄い残念』って感じに呟いた。
どうやら、少しはリッド以外の犯人を期待していたらしい。
「俺以外って、俺は黒かぃ」
やっぱり『リッド=犯人』になり、リッドはもう我慢の限界だった。
「そろそろ流石の俺も、堪忍袋の尾がぷっつり切れそうだぜ……」
こめかみに人差し指を当てながら、眉を微かにヒクつかせ、なんだかなぁ……と言う感じで複雑な表情のリッド。
このリッドの様子に、信じざるを得なくなってきた一同。
凄く気まずい空気に耐えかねたのか、ファラが手を上げて提案する。
「お腹が減ってるからリッドの堪忍袋がイケない状態になってると思います!」
『それもどうだよ。』と呟くリッドはもう無視。
「な、成る程な〜。そうだな、まずご飯にするよ!」
ちなみに『まだ食べてなかったのね。』と言う突っ込みは受け付けておりません。
「よし、今日は私が腕によりを掛けてオムレツを作るよ!」
「わい〜る♪ メルディもお手伝いするよぅ」
料理の材料を取りに行くため立ったファラの後を、メルディもついていく。
料理と聞いてメルディも張り切っているご様子。
そんなメルディを見たチャット心で焦りつつ、平然を装ってファラについて行こうとするメルディを引き止めた。
「料理ならボクが手伝います。メルディさんはフサフサを押さ…いえ、ふさふさと遊んであげて下さい」
どうやらチャットは、さっき遠ざけたクィッキーの姿が見えないのに怯えているらしい。
そんな様子のチャットを見たファラは、少し笑いながら『メルディとクィッキーはお茶の準備をお願い』と頼むと、
少し離れたところにおいてある食料袋までチャットを連れて足を運んだ。
「えっと〜、たまご・レタス・ポテト……」
「残ってたかな……?」と何気に爆弾発言をしながら、食料袋に手を入れて探し始めるファラ。
でもファラの作るオムレツって本当にシンプルだと思う(どうでもいい)
たまごとレタスを何とか探し当て、最後のポテトがどうしても見つからない様子のファラ。
「あれ? もう使っちゃった、とか?」
「付け合せがないと流石に少し淋しいですね」
「う〜ん……」
手を入れて探すのを諦めたファラが思い切って再び袋を逆さまにする。
重力にしたがって再び僅かな材料が袋から転がり出る。
出てきた材料をチャットが丁寧に拾いながら、残りの食材をチェックしていく。
「残りは…にんじん、レモン、たまねぎにイチゴですか。中途半端ですね」
「あ、ちょっと待って。何か袋に引っ掛ってる」
なんだか袋にまだ残ってるような手応えを感じ取ったファラは思いっきり袋を上下に揺する。
すると……
「クキュ〜……」
「「……くきゅ?」」
ぼとっ、と言う音が似合いそうな程、見事に仰向けなクィッキーが袋から降ってきた。
何が降ってきたんだ? と一瞬頭にクエッションマークが浮かぶ2人。
時間がたつにつれてチャットの顔色が変わる。と次の瞬間……
「ぎゃああぁぁ―――――――っ!!」
チャットがこの世の終わりとばかりに叫ぶ。
そんなチャットの叫び声を両手で耳を塞ぎ聞き流すファラ。
そんな中クィッキーはと言うと落ちてきたまんまの仰向けな体勢でころころと揺り籠みたいに転がっていた。
チャットの叫び声に目が思わずまん丸だ。
一通り叫んだチャットがクィッキーから離れるのを確認したファラがクィッキーを抱き上げる。
「クィッキーじゃない、どうしたの?」
「クィッキ〜」
抱き上げられたクィッキーはのそのそと手を左右に振る。
どうも感謝の気持ちを表しているっぽい。
そんな相変わらずもっさりしたクィッキーを抱き上げてファラはあることに気が付いた。
「クィッキー……、太った?」
「クククククククィッキ !!」
突如、クィッキーが叫ぶ。
「クィッキーはファラも少し太ったんじゃないかと言ってるよ」
「狽ヲ゛」
チャットの叫び声を聞いて何事だとメルディの後にリッドやキールも続く。
クィッキーの泣き声を聞いたメルディが丁寧にも通訳する。
その通訳の内容にファラは額に嫌な汗が浮かぶ。
「なんだ? 盗み食いの犯人は意外にもファラだったのか?」
「なんでそうなるの」
「買Nギュッ!」
抱かれていたクィッキーが短く鳴いた。どうやら抱いていたファラの手に力が入り締め付けられたらしい。
「冗談はおいといて、そういえば最近クィッキーの動きにキレがなかったのは確かだな」
冗談に聞こえない冗談は止めて……と言うファラの言葉を無視しながら、思い出したようにメルディが呟く。
確かに最近の戦闘でのクィッキーの動きは決して良いものではなかったのだ。
「丸くなったって感じはするかな、もさもさ感が以前より増してるような感じがするもん」
クィッキーを抱き上げて(握り締めて)いたファラがもにもにとクィッキーを触り始めた。
クィッキーがあからさまに嫌がっているが無視。
「体重も増えてるんじゃないかな?」
最後には『ずっしり重いし……』と主張し始める始末。
「なんだなんだ、クィッキーが盗み食いの真犯人か?」
意外な所に真犯人がいたもんだと、犯人扱いされていたリッドが苦虫を噛んだ様に顔を歪める。
「買oイバ! メルディが肩こり、原因はクィッキーだったか〜」
最近悩んでいた肩こりの原因を突き止め、表情が晴れやかになったメルディ。
「メルディ肩こりだったのか……?」
何だか冷静に突っ込むキール。
「クィッキー!!」
盗む食いがバレたクィッキーはこの期に及んで逃げようとファラの手の中で暴れだす。
が、ファラの握力を甘く見ては駄目なんです。
暴れ始めたクィッキーを凄い笑顔で締め上げ始める(オィ)
「クィッキー、食い逃げは犯罪って言う人間界のルールは知ってるかな〜?」
ファラがクィッキーを抑えている間に、なにやら後ろの方でクィッキーの処罰はどうするよ会議が始まっていた。
「『盗み』食いってくらいだから窃盗罪じゃねぇか?」
さっきメルディが入れてくれたお茶を啜りながら、空腹に耐えるリッド。
「まぁ、ともかく重罪だろうな」
会話に最低限参加しながら小説片手に黙々と読書に没頭する器用なキール。
「つ、追放というのはどうですか?」
かなりドキドキしながらも何とか平常心を取り戻したチャットがファラから1番離れた場所で提案する。
流石海賊、時に残酷だね。かなり私情が入ってるように見えなくもないが。
「買oイバ! クィッキーは島流しか!? クィッキーが島流しならメルディも一緒に流されます」
「チャット、島流し却下だ」
メルディも『一緒に〜』発言に素早く反応したキールがチャットの提案を即行却下。
リッドが横で『粕ス応早!』と突っ込んだが、華麗にスルー。
「では非常食と言うのは……?」
「まぁ、あれだけ丸ければ今の僕達の空腹感を紛らわす程度にはなるかも知れないが……」
「そういえばメルディがさっき『クィッキー丼』出してくれたっけなー」
皆さん相当な空腹感と戦っていると見た。
クィッキー、リアルにピンチ!!
メルディ以外、一同お腹の虫の泣き声と共に一斉にクィッキーを見る始末。
その異変にいち早く気が付いたクィッキーの顔色が白くなっていく、クィッキー気絶寸前。
クィッキーの異変と『ぐぅ〜……』と言う音に気が付いたファラは何となく振り返った。
「……リッド、よだれ垂らしながらクィッキーを見ない。
キール、『島が流し>非常食』って非常識な方式を作らない。チャッ…キャプテン、何気に酷いことをサラッと言わないの。
メルディ……クィッキーの“お墓を作らない。”クィッキーまだ生きてるから」
メルディがなんだか静かだと思っていたら、せっせと身近な土を集めて小山を作りクィッキーの墓を作っていた。
ご丁寧にも小山の上に『クィッキーここに眠る』と書かれた棒が刺さっている。
「しかしなファラ〜、この腹ペコばかりから逃げるのは至難の業よ。さすがに素早いクィッキーでも無謀だな。今は鈍いけど……」
「もう、飼い主までクィッキーを見捨ててどうするの……」
すっかり一同に対して呆れ果てるファラ。
「しょうがない。クィッキーの処罰は私が決めてあげる」
ファラに掴まれていたクィッキーが女神様降臨だぁ……と言う感じの期待の眼差しをファラに向けた。
それに気が付いたファラはクィッキーの頭を苦笑しながら優しく撫でる。
「提案@」
どうやら提案が複数あるらしい。一同ファラの言葉の続きを静かに待つ。
「非常s……」
「やっぱり非常食かぃ」
ファラが全てを言い終わる前に素早くリッドが突っ込む。
非常食は駄目って感じな事を言ってた癖にファラも結構酷……
クィッキーの顔が再び『( ̄□ ̄ )!?』って感じで絶望へと向けられる。
「話は最後まで聞く! 提案A」
流石に一同、真面目に聞く気がなくなったのか、もう緊張感なんてものはなくなっていた。
だらけモード全開(爆)。
「皿洗い・食事当b……」
「普通に無理だろ」
クィッキーになんて事させる気なんだ。
皿洗いは万が一にも頑張ったら出来るかもしれないが、さすがに食事は無理がある。
最悪の場合、食卓にクィッキーが出てく事も考えられる。(鍋に落ちるとか)
「じゃ、提案B。無制限ダイエット! 題して昔のあなたが好きだった作戦」
「なんなんだよ、その後についてるサブタイトルみたいなのは……」
「細かいことは気にしない気にしない。うん、イケるイケる!」
それに気にしすぎると将来ハゲるんだって。
「って事なんだけどクィッキーはどれがいい? 私的には2番がとってもオススメ」
提案された処罰を密かに頭の中で確認しているのか、クィッキーが白くなる。
@ 食べられる
A こき使われる
B ダイエット
……なんだか既に選択の余地なんてないような気がするね。
しかし、クィッキーは偉かった。逃げ(られ)なかった。
自分のしたことに向き合おう。
そう決めたクィッキーは身体を真っ直ぐ伸ばし、手を上げた。
「クククィッキー!」
元気良く鳴く。
「う〜んとな、クィッキーは“1番がいいらしいです”」
「( ̄□ ̄ )!!!?」
メルディの通訳に思わず目を剥くクィッキー。
そんな事は言ってない言ってないからっ! と左右に振れる部分をフルに使い、身体全体を使って否定を表すクィッキー、が。
「そうか、クィッキーは自分が俺達の大事な食料を食べてしまったから自分が犠牲になって、きっちりと落とし前をつけようと……」
うんうんと感心したようにお腹をさすり始めるリッド(危険)。
「フサフサながら天晴れな心意気です」
クィッキーの覚悟に思わず心を打たれるチャット。
「調理法は丸焼きが無難だろう」
小さいから丸ごと食べられるように、と本を読みながら丸焼きを勧めるキール。
「買Nィッキーククィッキー!!!」
主人にまで見捨てられ、腹ペコな野獣(?)共に囲まれ、万事休すなクィッキー。
再び左右に振れる部分をフルに使い、身体全体を使って否定をアピールするクィッキー。
そんなクィッキーの運命はいかに……!!
「もうメルディ、嘘つきは泥棒の始まりって言葉知ってる?」
皆がクィッキーを食べる方向へと持っていくので、ファラが見兼ねて口を挟む。
「クィッキ〜!!」
ああ女神様!! とばかりにクィッキーの助けてくれてありがとうって感じの眼差しがファラの方へ注がれる。
でも忘れるなクィッキー、この状況に追い込んだのは“ファラだからね。”
「クィッキーが本当に1を選んだならいいんだけど、さすがに脂汗までかいて拒否してるんだから違うんじゃない?」
ファラの手の中のクィッキーは汗だくだった。
「あはは〜メルディうっかり聞き間違い♪」
うっかりで食べられたら堪(たま)あったもんじゃないよ。
「メルディ、ほらクィッキーが悲しんでるよ?」
半分死んだようなクィッキーを見せるファラ。
色んな意味で瀕死なクィッキー。
「大丈夫よぅ、メルディはクィッキーを見捨てるような事は絶対しません♪」
「………ク、クククィッキー!!」
「………………」
平然と言い切るメルディにクィッキーも遅れて鳴く。
そんな仲の良い1人と1匹を見ていたファラだが、ファラは1匹の異変に気が付いていた。
愛想よく見えるクィッキー。
爪が、爪が手の甲に刺さって“痛いです”(苦笑)。BYファラ
きっとさっきの1言で傷ついてストレスが溜まってしまったのかも。
そんなクィッキーの心情を垣間見たファラはなんとも言えない表情だ。もう苦笑するしかない。
「うーんと、クィッキーは3番が良いんだよな〜?」
「クィッキー」
今度こそ自分の意思を皆に伝えることが出来たクィッキー。
伝えられたのがそんなに嬉しいのか、尻尾を振り振り、両手を万歳。
明日から怒涛のような、地獄のダイエットが始まるのに……(爆)
〜おまけ〜
「ほらクィッキー、休まない! あぁ、違うそこはジャンプ! あぁあぁそうじゃなくて!!」
「クィッキ〜……」
「もっとこう、力強く身体全体を使って!!」
「ク、クィッキ〜……」
ファラのダイエットメニュー@ 洗濯。
「クィッキー、頑張って昔のようなクィッキーに戻ってな」
「なぁ、キール。皿洗いも洗濯も同じような感じがするんだけど」
「皿洗いと洗濯? 同じような感じで同じではないぞ。でもファラが楽できるのは同じだな」
結局得をしたのはファラだった。
〜後書き〜
こんにちは、今日からゆっくり眠れそうな津名です(爆)
制作期間3ヶ月、無駄に長い時間をかけたなオイと突っ込んでみる。
そして無駄に話も長い(^^;)
んで、今回も没が出たんですよ、えぇ没が。
その内この没も『色々寄せ集め』にUPしようかと思ったり思わなかったり。
折角書いたんだし、勿体無い。(津名的意見)
でも無事に出来上がってマジよかった……
ファラが作るオムレツかオムライスか結構最後悩んでしまいましたよ(爆)
オムレツだけどレシピがない。あれライスだっけ? みたいな。
だから本編中のオムレツは材料卵だけ、材料わかんないから。
始めはライスの材料かいてたんですけどねぇ。
あと最後の方書き方が微妙に違うと思いますが、時間差です。
そこんところは、見て見ぬフリをお願いします(爆)
ここまで読んでくれた方、本当にありがとうございます。
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです(^^)
UP時期:2006/2/19