晶霊温泉

▼コップ様リクエスト作品。

※設定が少々違いますが、そこは製作者の知識レベルが低いせいです。ご了承ください。


 インフェリア晶霊温泉。


 世界を救う旅の途中に、気晴らしに寄った晶霊温泉。
 今回のお話はそんな晶霊温泉のお話……


「おっかしな〜、これでばっちりなハズなんだけどな……」

 男湯に入る前に何故か準備体操をし、勢いよく開けた扉の向こうは、
 リッド立ち居外誰も入ってない、まさに貸しきり状態の温泉だった。
 その結果に不服なのか、首を捻りながら唸るリッド。

「どうしたんだリッド、ラビットシンボルなんて装備して。ラビットシンボルなんて普通は装備しないだろう?
 そもそもラビットシンボルはウサギの足なんだぞ、そんなものを湯の中に入れるなよ」

 ありったけのラビットシンボルを首から提げているリッドを、
 ちょっと頭のネジが飛んじゃった人を見るような目で見ながら、かけ湯を済ませたキールが一足先に湯に入る。

「いや、湯に入れねぇけど……おかしいな、幸運ステータスはバッチリなはずなんだけどなー」

「なんだ、湯につかるのに幸運ステータスが関係あるのか? 初耳だな」

 リッドのステータス関係のぼやきに思わずキールが馬鹿にしたような口調で返す。

「別に普通に入る分には関係ねぇけど、プレーヤーとしてはやっぱり全イベント制覇してぇだろ?」

 そういうと、どこに向かってか、カメラ目線をキメるリッド。
 それを意味もなく呆れながら見るキール。

「ここのイベントは隠れと言っていいほど稀にしか発生しないんだぞ。
 男としては見たいだろ、メルディ男湯乱にゅ……」

「そんなイベント起こさんでいい!!!!!」

 なんだか得意げに話すリッドの言葉をキールが遮って叫ぶ。
 『メルディ』という単語を聞いただけで湯に浸かって、ほんわか赤くなった顔を更に赤くさせ、
 『男湯乱にゅ……』の単語でメルディならやりかねないと即座に判断したのだろう。

「えーっ、見たいだろ。テイルズの温泉と言えば覗きイベントだぞ?
 まぁ、俺等が覗きに行くと高確率でファラに返り討ちにあうのが関の山……」

「僕まで数に入れるな、数にっ」

 リッドの『俺等』発言にまた真っ赤になりながらも心の中で平常心を保とう必死なキール。

「いや、キールには来てもらわねぇとな」

 いつの間にやら、かけ湯をすませ湯に入ったリッドがキールの横に陣取り、タオルを頭の上にのせる。
 首に提げていたラビットシンボルは入口横の手桶の中に置いてきたらしく、
 手桶にはラビットシンボルが山積みになっていた。
 キールはキールで横のリッドに、苦虫を噛んだみたいな嫌な顔を向けて1言。

「リッド、お前僕を盾にする気だろう」

 キールはお約束のパターンを予想していたらしい。

「んな事しねぇよ。俺はだな、日頃頑張っているお前にプレゼントをだな」

 真面目顔でキールに向き合い、肩に片手を置くリッド。

「プレゼント? わざわざ覗きに行かないと貰えないプレゼントなんかいらないね」

 そんなリッドに、馬鹿らしいと鼻で笑いながらそっぽを向くキール。
 リッドはリッドで、キールの肩に片手を置きつつ、もう片方の手の人差し指を意味もなく立てながら真面目顔だ。

「言っておくけどな、プレゼントと言っても物じゃない。名誉ある称号 スケベ大魔……」

「そんな称号はいらん!!!!!」

「Σぐはっ!!」

 もうなんだか先が分かってたみたいです。
 キールが御馴染みの青緑のタオルをまるで木刀で頭を殴るような感じで、
 タオルを振り上げリッドの顔を思いっきり叩いた。

「っつ……。なんつうもんで叩くんだよ! きったねぇっ!」

 その攻撃を直に受けたリッドは、思いのほか強かったタオルに軽くよろめいた。
 よろめきつつも、キールに何で叩かれたのかを確認すると、反射的に叫ぶ。
 キールがリッドを叩いたもの、それは風呂に入る前に脱衣所で見たキールが腰に巻いていたタオルだった。

「き、汚い言うな! これ以上アホな発言は誰が許そうとこの僕は許さないからな、いっぺん死んでこい」

 タオルを再び腰に巻くキール。
 どうも悪ふざけが過ぎたようだ、リッドは強打された顔を擦りながら女湯の方に顔を向けて、悩みをぶつけ出した。

「あぁ〜、どうしてだ〜、幸運ステータスはバッチリ100超えしてるんだぞ〜、何がいけないんだよ〜」

 彼はまだ知らない、幸運ステータスはラビットシンボルに頼ってはいけないことを……(笑)

「うるさい、風呂くらい静かに入れ」

 そんなグダグダ言うリッドに付き合うのも疲れてきたキールは、持参した本を片手に読書タイム。
 今回の本はいつもの本とは違いウンディーネの加護を受けた水に濡れない素敵仕様になっております。
 そこまでして読書がいいのかキール。
 そんな仲間割れしちゃった2人の前に、再び入口の扉が豪快に開いた。

「おぅ、なんだかアレだな」

「ん、フォッグも入りにきたのか?」

 なんだか話がなくなって静かになった途端、シルエシカリーダーの豪快さんフォッグが乱入する。
 腰には赤いタオルがしっかりと巻かれている。

「おぅよ! ここの温泉はほら、アレだアレ!」

 いきなり入ってきて豪快にかけ湯を済ませたフォッグは、これまた豪快に湯に浸かる。
 豪快すぎてお湯が豪快に湯舟から流れ出す。ここまで豪快だと見ていて拍手を送りたくなる。

「身体にいい、と言いたいのか?」

「おぅ!」

 いつものように簡潔に物を言うフォッグ。

「ここにアイラさんがいればなぁ……」

「アクアエッジ」

「うおっ!!」

 意思疎通もままならないので、不意にそんな言葉を呟いたのだが、
 何をどう解釈したのか、キールのアク アエッジがリッドを襲う。

「な、何すんだよ、危ないだろ! イヤそれ以前に半端なく熱い!!」

 何とかキールの攻撃、アクアエッジを避けたリッドだが、
 避けた時にアクアエッジがリッドの身体のどこかに掠ったらしく、異常なアクアエッジの温度に思わず悲鳴を上げる。

「ふっ、今回は温泉と言うことで、熱湯を使ってみた」

 キールはパタンと本を閉じながら得意気に言い放つ、それを聞いた途端、リッドはすかさず突っ込む。

「使ってみた。じゃねぇよ! 熱湯って既にアクアじゃねぇし」

 水晶霊と火晶霊の恵み、晶霊温泉だからこそ出来る素敵合体技がここに誕生した。
 まぁ、そんなことリッドにしてみれば水だろうとお湯だろうと、攻撃されてるんだからどうでも良いいことだった。

「まぁ、細かいことは気にするな」

「細かくねぇよ」

 どうも今回の話題のふり方は駄目だったようだ。

「でも、こうもキールにやられてると主人公の威厳が……!」

 発言にいちいち反応されて攻撃されたら流石のリッドでも身が持たない。
 それ以前に、前衛でありこのゲームの主人公であるリッドのプライドと威厳が、
 こうもやられて良いものかとリッド自身に問いかけている!
 しかし、ここは温泉、銃器等の持ち込みは明らか場違いだ。

「風呂場でも攻撃できて、尚且つ役に立つもの……」

 攻撃する気満々だね。

「そんな都合のいい物があるはずないだろう」

 指を顎に当て、悩むリッドにキールの人を小馬鹿にしたように、否小馬鹿にした口調で再び向けられる。
 そんな言葉攻撃は痛くも痒くもないリッドはキールを無視して考える。ひたすら考える。

「……アレはどうだ? ほれ」

「「…………?」」

 ふと、フォッグが何かを見つけたのか壁際の方を指差した。
 素直に指の先を見るリッドとキール。
壁際にあったのは、いい感じに長い1本のヘチマだった。

「おぉ、ヘチマか!!」

 ヘチマを見つけたリッドは嬉しそうにヘチマの側に寄っていく。

「待て、ちょっと待て、ヘチマだぞ? よく考えろ、ヘチマだぞ?」

 そして、それを止めるのは勿論キールの役目だ。

  「分かんないぜ? ヘチマで叩かれると痛いだろ」

「いや、痛いかも知れないがヘチマだぞ? ヘチマ剣士とでも名乗るのか?」

「それも楽しいかもな。ヘチマ剣士、参・上☆」

 とってもノリノリなリッドはヘチマを手にした途端、無意味に『ジャキーン☆』とポーズを決める。
 言ってはなんだが、とってもアホくさい。

「……付き合ってられないな、僕はもう出る。後は勝手にやってくれ」

「キール、お前ノリ悪すぎ」

 リッドのアホさ加減にいい加減ウンザリしてきたキールが、
 手に持った本をパタンを閉じて湯舟から立ち上がる。
 そんなキールの反応に『つまんねぇな』とぼやきつつ、手に持ったヘチマで身体を洗い出した。
 そして、その横にフォッグが並び2人してキールに背を向ける。

「ふん、どうとでも言ってくれ」

 キールも風呂場から立ち去ろうと、2人に背を向ける。
 馬鹿馬鹿しいオーラが全身から見えてるよ。

「あぁ? なんだ、キールは身体洗わないのか? 汚い男は嫌われるぞ」

 不意にフォッグの豪快な笑い声とともにその台詞がキールの耳に届いた。
 その瞬間キールの歩みがピタリと止まる。
 そしてゆっくりとフォッグの方に顔が向く。

「僕は汚くなんて無い。エターニアに優しいだけだ」

 どうやらキールはどれだけ自分がエコロジーかを主張したいらしい。
 にしても身体は洗おうよ。そこに『それも微妙だよな』とリッドが1言。

「ガッハッハ」

 フォッグの笑い声で場の空気が何故か流されてるのを感じるキールだった。



* * * * *


「なんだか静かになったね〜」

「そうだな〜、何してたんだろうな〜」

 一方女湯である。
 入った時はリッドの意味不明な叫び声が木霊して気持ち悪かった。
 だが、今はどういう訳か静かになりメルディとファラはゆっくりとお湯に浸かっている。

「本当に、いいお湯だね〜」

「気持ちがいいよー、これで風呂上りに麦茶があれば完璧だな」

「メルディ、それを言うなら牛乳でしょ」

「バイバ! インフェリアでは牛乳なのか!? セレスティア麦茶が一般的よぅ」

「それは初耳、キールに言えばまた調べそう……」

「風呂上りに麦茶、言えばキール喜ぶのか?」

「う〜ん、それはどうだろう。試しに言ってみたらどうかな。楽しいかもね」

「キールが嬉しいとメルディも嬉しい! 風呂上りに早速言ってみるな♪」

 風呂上り、メルディが最初にキールにかけた言葉は
 『セレスティアでは風呂上りに麦茶!』だったのは書かなくても分かりきった事だ。
 この後キールが頭に“?”を浮かべ、ファラが事情を説明するまでの間、
 メルディは『麦茶!』を連呼してキールにせまる形になる訳だが、それはまた次のお話。





―後書き―
今回はコップ様リクエストで、確か「Eの旅の途中」との事だったので
晶霊温泉にスポットを当ててみました。
折角の温泉なのでメルディ乱入を入れたのですが思いのほか長くなりそうだったので
『湯の巻』って感じで分けてみました。
乱入してないけど(笑)

初めのリッドはプレイヤーの気持ちを代弁しています。
プレイヤーは勿論津名ですけどね。
これラビットシンボル使用不可とか知らなかったので見れるはずもなく、
結構私の中で無駄に苦労したイベントだったりするんですよ。
ラビット使用不可を気が付いてから何度も晶霊温泉付近でキャンプですよ。
100回位してそう……(爆)

まぁ、そんなこんなで後半だと思われる、そうですね『戦の巻』でも命名しましょうか。
次こそ『白熱!! 晶霊温泉 〜温泉といえばこれだろう〜』に本格的に手をつけていこうと思います。

リクエストしていただいたコップ様、毎回リクエストありがとうございます。
毎回UPは遅いですが、気長にお待ちしていただけたら嬉しく思います。
最近の忙しさと元々の筆の遅さがミックスされ亀よりのろのろなんですけど……(^^;)

では、ここまで読んでくださった方々、本当にありがとうございました(お辞儀)

ちなみにヘチマ剣士は某ゲームのパロです。
ヘチマ剣士好きなんですよ、ヘチマが面白いので……(笑)

UP時期:2006/3/22