悲壮歌 没エピソード(リオン編)

こっちが『――の中身はなんじゃらほい』の方がしっくりくるよね。
こっち別に悲しくもないし(爆)
没ではリリスが登場るすシーンでリオンが出てるというだけなんですが。
話の分かれ目はルーティのへそくり取立て風景からです。
では、どうぞ〜





「家でサーチガルドは反則だ! 亭主をもっと信用しろ!」

「ヘソクリなんてしてる分際で意見してんじゃないわよ!!
 とにかくその618ガルドは没収、それで2階の雨漏りを直すのよ」

「理不尽だ、理不尽すぎるぞ!! お願いだからこのお金だけは……」

 何だか取立て屋が無理矢理顧客からお金を徴収してるような光景に見えてならない。
 にしても、まだ封筒を開けてすらいないのに、いくら入ってるのかバッチリ分かっちゃってるルーティさん。
 ルーティのお金への執着は凄い。と改めて実感したスタンだった。

「ってかナレーション、勝手にまとめるなよ」

 ナレーションってのは、まとめないと成り立たないんです。八つ当たりしないでください。

「何、そんなに一生懸命隠してたって事は何か理由があるわけ? いいわ、聞いてあげる」

 凄く大事にしているスタンを見たルーティが仁王立ちしながら、
 『文句があるなら聞いてあげるから言ってみな』という感じで聞き返してきた。
 そう聞かれたスタンは『え〜っと…』と視線を泳がせながら言葉につまった。

「はっきりする! 優柔不断な人間は嫌いなの、言え」

 そういう所はリオンそっくりだな、流石姉弟。と小さく呟くスタン。

「何、何か言った?」

「いえ、何も」

 どうやら小さく言ったつもりが少しルーティに聞こえてしまったらしい。
 ルーティの熊も怯みそうな凄い睨みを目の当たりにしたスタンは、もう何も言い返せなかった。
 そこに人を馬鹿にしたような声が2階から降ってきた。

「なんだ騒がしい、もう少し静かに出来ないのかお前達は」

 声の主はルーティの弟リオンだった。
 先の戦いで瀕死の重傷を負ったリオンだが、1ヶ月で大分回復したようだ。

「あらリオン、もう起きても大丈夫なの?」

 2階の階段からリビングに降りてきたリオンは階段の前で1回止まり、
 手摺りに寄りかかりながら静かに新鮮な空気を肺に送り込む。

「僕はお前等に心配されるようなヤワじゃない」

「相変わらず可愛くないわね、その捻じ曲がった根性叩きなおしてあげましょうか?」

 寄りかかりながらも憎まれ口を言うリオンに、ルーティがいつものように突っかかる。
 ルーティの傍に居るスタンは苦笑しながら、ルーティの意識が封筒から反れたのをいい事に少しずつ後ずさりを開始した。

「ふん、僕の根性は捻じ曲がって等いない。捻じ曲がった根性で僕を測るな」

「なんですって――――!」

 もうどっちも根性曲がってるよ、いい意味でも悪い意味でも……byスタン
 箪笥がバレてしまったので、スタンは手頃な床板を外すし、ヘソクリを素早く床下に掘り込んだ。
 そして、何事もなかったかのように床板を元に戻すとリオンとルーティの仲裁に入る。
 この2人の場合、誰かが止めないと悪いほうへと転がっていってしまう。

「ストップストップ、仲がいいのか悪いのか相変わらず分からない姉弟だな」

「ちょっとスタン、これのどこが仲が良いっていうのよ」

「お前の目は節穴か」

 良かれと思って割って入るスタンにも容赦ない言葉か飛んでくる。
 この2人の攻撃を苦笑交じりで、聞かなかった事にしながら、スタンは新たな疑問をリオンにぶつける。

「ところでリオン、わざわざ降りてきたんだ、何か用事があったんだろう? 呼んでくれれば良いのに」

 ほって置けばルーティが今にも殴りかかりそうなので、
 スタンはルーティの腕を押さえながら顔だけリオンに向けて答える。
 女性にしては力があるルーティを押さえるスタンも必死な感じだ。

「………食後のプリンだ」

 『これ以上世話にはなれない』という言葉を飲み込み、用件だけを述べるリオン。
 リオンはリオンなりに感謝しているのかもしれない。

「あぁ、プリンか。プリンなら、あそこだ、冷蔵庫の中」

 それを知ってか知らずかスタンは両腕は使えないので、顎で冷蔵庫を指す。
 どうやら食後のデザートをリハビリもかねて取りに来たらしい。
 押さえつけられているルーティの横を通り冷蔵庫の中のプリンに手を伸ばした。

「プリンもタダじゃないのよ、味わって食べなさい味わって!!」

 リオンの行動に怒りながらも、ひとまず落ち着きをとり戻したルーティがスタンの腕を払い、
 腕を組みながらリオンを軽く睨む。

「しかし、ルーティも毎日プリンばっか作って大分上手くなったよな、プリン作り」

「好きで作ってんじゃないわよ、買ったら今もギリギリな家計が赤字になるのよ、
 赤字なんて私の信念が許さないわ。作ったほうがはるかに安くてお手頃リーズナブルなの!」

 この孤児院はルーティのドケチ根性でなんとか経営できているようなもの、
 その経営にプリンと言うのは実を言うとかなり辛いものだった。
 そこで、ルーティは自分でプリンを作って、買うものより安くしようと考えたわけ。
 プリンなんて本当は作らないでもいいのだがこの世でたった2人の姉弟。
 いままであまり関わりがなかった分を、ルーティはルーティなりに頑張っているのかもしれない。

「……牛乳くさいプリンだな」

 早速手に取ったプリンをスプーンですくって食べたリオンがぼそりと呟く。
 その言葉を地獄耳で聞いたルーティが『なんですって!!』と怒鳴りながらリオンを睨んだ。
 スタンがまた「まぁまぁ」とルーティをなだめる。

 あの戦いが終わって平凡だけど幸せな日常を、幸せな時間を、幸せな家庭の素晴らしさを改めて知った。
 この平凡な時がずっと続くといい。
 何年後かに、そんな事もあったと笑える日を迎えられるように……
 そして今日も俺の苦労は続いていくのか……そう思うと改めて苦笑するスタンだった。

 そんな感じで、クレスタの『デュナミス孤児院』、もとい新婚さんの日常は毎日がこんな感じで過ぎていくのでした。



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〜あとがき〜
こっちではへそくりを死守できたスタンですが、本編では爆睡。この違いってば一体……(爆)
リオンにはやっぱりプリンですよね、ファンダムまだしてないので詳しくは知らないんですけど。
D書けて、リオンも出せて目標は達成できましたね。
でも勿論これで終わらずにまたD書いてみたいなぁと思ったり思わなかったり。
Dも好きだしリオンも好きだ!!!(え゛…)
では、没ですがここまで読んでいただいて感謝します。
ありがとうございましたw


UP時期:2006/5/17