ハローウィン?
〜これもあなたの為なのよ〜
「セネセネ〜 朝だよー」
「…………」
朝、いつものようにセネルを起こしに来たノーマは苦戦していた。
毎回ながらセネルは朝が苦手だった。
某シリーズの金髪寝ぼすけ親子を思い出しのは作者だけだろうか。
「いつもながら朝弱いんだね〜 セネセネは」
「…………」
起きる気配の無いセネルにノーマは最後の手段と言わんばかりにポシェット(?)からある物を取り出した。
そして1回咳払い。
「お兄ちゃん、もう朝だよ。朝ごはんだよー」
ノーマお得意の、ものまね。
「……シャ……ん?」
寝ながら眉をひそめ、首をかしげるセネル。
なんか変だろ? と寝ながら考えているのかも知れない。器用だね。
「はい、あ〜ん……」
ノリノリのノーマ(洒落ではない)が手に持ったハリエット特製のパンをセネルの口に押し込もうと瞬間。
「…………何してるんだ、お前は」
「……っち」
セネルが起きた。
そしてノーマが舌打ちをしながら残念そうに呟く。
「折角、ハッちの新作パンを食べさせてあげようとおもったのに〜 食べないと損だよ?」
「……そんな恐ろしいものを俺の口に入れようとしてたのか?」
ハリエット特製のパンを見ながら、心の中で頭を抱えるセネル。
凄くハリエットに失礼な言い方だ。
「まぁ、とにかーく! 起きたんだからウィルっちの家に行くよ。もうリッちゃんもクーも皆集まってるんだから!」
「あぁ、分かった」
いつの間にか手に握らされていたハリエット特製のパンを一応台所のバスケットに入れたセネルは、
玄関で早く早くと手招きしているノーマの方へと歩きだした。
走れよ。と心の中で突っ込む作者。
* * * * * * * * * *
「おぅ、セの字。相変わらずワレは朝に弱いのぉ」
ウィルの家に着いたセネル達を出迎えたのは、家の前でギートと戯れていたモーゼスだった。
「モーゼス、お前はいつも元気だな」
「クカカカカ!」
どう解釈したのか、モーゼスは何故か誇らしげに胸を張りはじめた。
どうやら誉められたと思ったらしい。
激しく違う。そうセネルが目で訴えているがモーゼスは気にしない。
男モーゼスは、己の道をひたすら行く。
「っで、なんでお前は家の前でギートと戯れているんだ。入らないのか?」
「よう聞いてくれた、実はなセの字!」
そう言うとモーゼスは、ポンとギートの頭に手を置いて話しを続ける。
「ギートが家の中で暴れるんじゃ」
「ギートが?」
セネルは驚きを隠せなかった。いつも大人しいギートが暴れる? 何故。
「な、中では一体どんな恐ろしいことが……」
ギートが暴れるのは、恐ろしい物を見た為、と勝手に決めつけたセネルの頭の中は想像で凄いことになっていた。
今日集まった理由はハローウィンとか言うパーティをする為だと、ウィルの家に来る途中にノーマが言っていた。
詳しくは知らないが、幽霊やら化け物の仮装をして楽しむとか……
「お〜い、セの字。戻ってこんかい」
どんな事を想像したのかはあえて書かないとして、さーっと血の気が引き、
真っ青になったセネルの顔の前で手を上下させらがら、モーゼスは自分の世界に入ってしまったセネルに呼びかける。
「俺は用事を思い出した、ってわけで失礼……」
「またんかぃ、ワレ」
急に手を上げて、そそくさと去ろうとしたセネルの肩を、モーゼスがガッシリと捕まえた。
「離せモーゼス、俺は行くべきところが! 俺はまだステラには逢いたくない」
『ステラに逢う=ご臨終』と解釈しているセネルは必死にモーゼの手から逃れようともがきはじめた。
一応言っておきますが、セネルはステラに逢いたくないわけではないですよ。いや、本当に。
「セの字、ワレは一体何を想像したんじゃ……」
今すぐにでもモーゼスを投げ飛ばしそうな勢いだ。
モーゼスが危ない!!
「あらぁ? セネルちゃん。一体どうしちゃったのかしらぁ〜?」
「おぉ、姉さん」
モーゼスの危機を救ったのはのんびり口調のグリューネさんだった。
ウィルの家の前で、どたばたやっていたので不審に思ったのか、家の中から出てきたのだろう。
後ろにノーマも続く、ノーマは一体いつの間に家に入ったのだろうか。
「姉さん、セの字が逃げようとにとるんじゃ」
「あらぁ? 折角のパーティなのにセネルちゃんは参加しないのかしらぁ?」
残念ねぇ……等と言いながら指を顎に当ててお決まりポーズ。
いや……とかなんとか口ごもるセネル。
「あ、お兄ちゃん♪」
開けっ放しのドアから見えたのかシャーリーが嬉しそうに家の中から出てきた。
クロエも、セネルと聞いてシャーリーに続いて出てくる。
「お兄ちゃん、また寝坊?」
「シャ、シャーリー。おはよう」
寝坊? と聞かれて苦笑交じりで返事をしながらセネルは心の中で焦っていた。
皆がゾロゾロと出てきては逃げられない。
「遅いぞクーリッジ、毎回起こしに行く者の身にもなってみろ」
「返す言葉もございません……」
自分が悪いと自覚しているセネルは素直に謝る。
しかし、言っているクロエの顔は笑っていて穏やかな顔だ、本当に怒ってる訳ではないのだろう。
「セネセネ〜 そんなんだから某アニメの主役をボサボサ頭の学者に乗っ取られるんだよー」
「どこの話だっ!」
ノーマが有名な話を出してきた、分かる人には分かる小ネタです。
「俺だって頑張った、でもな某ボサボサ頭の学者(声優)人気は凄いんだぞ。ノーマ、お前はそれを知らないだろ」
セネルが涙混じりに答える。
いや、本当に君はよく頑張ったさ、ほら初めから影薄かったらしいし。
作者は某アニメは見てないから詳しくは知らないけど(爆)
「と、とにかくお兄ちゃん。ハリエットが待ってるよ、早く入った入った」
くぅ……と涙を溜めながら話すのを見たシャーリーは、話題変えに必死だ。
『入った入った』と手招きするシャーリー。
それを聞いたセネルの顔が強張る。
“嫌だ、入りたくねぇ……”
そう思うセネルだが後ろからノーマがグイグイと押してくる。
それを見たモーゼスも『ワイもワイも〜♪』と言わんばかりに参加、結果セネルは家に押し込まれる結果となった。
全身から嫌だオーラが滲み出すセネルだが、無駄な抵抗だった。
* * * * * * * * *
「お、お兄ちゃん?」
「ど、どうしたんだクーリッジ……?」
家に入った一行(?)はセネルのやる気がなさそうな顔に心配しだした。
当たり前だろう、折角のパーティーなのに1人“もう嫌だなぁ、早く帰りたいなぁ、面倒だなぁ。”感が、
滲み出てるのだから盛り上がるはずもない。
セネルは家に入るなり下を向きながら部屋の隅に体育座りだ。
「セの字の頭の中は今凄いことになっちょるんじゃ」
1人理由を大体知っているモーゼスは、ため息をしながら部屋の隅で丸くなっているセネルを指差した。
口の端が微かに上がっているモーゼス、男モーゼスは笑いを堪えるのに必死だった。
* * * * * * * * * *
「って訳でのぉ、どうもセの字はどこか勘違いをしとるんじゃ」
「………………」
一同無言で視線をセネルに向ける。
セネルは「何だよ、なんか文句あるか!?」と開き直っている。
どうやら逃げるのは諦めたらしい。
「いいかクーリッジ、ギートが暴れたのは……」
「どこぞの馬鹿山賊が原因なんですよ」
「なんじゃ、ジェイ坊。ワレはワイの事を言っとるんか?」
クロエとジェイが原因を説明するべく話を始めるようとした時、
モーゼスがジェイの言い方に怒りながら話しに横槍を入れた。
「僕はモーゼスさんが、とは1言も言っていませんけど」
「言っちょちやろ!!」
いつもの口喧嘩に発展。
この喧嘩もいつもの事なので皆さん無関心だ。
「ジェイちゃんとモーゼスちゃんは、本当に仲がいいのねぇ。お姉さん嬉しいわぁ」
「いや、グー姉さん仲がいいの意味を履き違えてない?」
「あらぁ〜? そんなことはないわよぉ?」
ジェイとモーゼスの喧嘩を見てたグリューネさんが、のほほん口調で言うのでノーマが突っ込む。
なんだかもう、滅茶苦茶だった。
「……で、だな、クーリッジ」
「あ、あぁ……」
クロエは後ろでいつものように、どんちゃんやってるのを見ないように話を無理やり進めようとする。
セネルもそれが分かるのか、クロエの後ろの光景を見ないように返事をする。
「ギートが暴れたのはな、モーゼスがギートにハリエット特製のパンを食べさせたのが原因なんだ」
「なんでそんな恐ろしいものを食べさせたんだよ」
話が話しなので、2人は自然と声のトーンが下がる。
いつの間にやら部屋の隅に移動して、内緒話の体勢に入った。
「それが、ハリエットが今日のためにパンを焼いて、机の上のバスケット詰めて置いたらしい」
「ふんふん」
「それを知らないモーゼスが腹の減ったギートに食べさせてやったらしい」
「それは、な、なんと言うか……」
無意識に手を合わせて南無のポーズをとるセネル。
ギートは死んでいない。すると……
「お兄ちゃん、クロエ。もうすぐハリエットが来るよ」
「「買Vャ、シャーリー」」
満面の笑みのシャーリーが、クロエの横から顔を出した。
ちょっとビックリする2人。
「2人で内緒話なんてずるい! 私も入れて」
「あぁ、そうだな」
笑顔のシャーリーのつられてクロエも笑う。
「そ、そういえばウィルの姿が見えないな。どうしたんだ?」
仲いいな〜とかなんとか思いながら、セネルは始めから姿の見えないウィルの存在に疑問を感じる。
そういえば、1回も出てきていない。
「あ、ウィルさんなら出かけてるよ?」
「……どうしたんだ? また魔物でも?」
セネルの脳裏に嫌な予感が浮かぶ……
「セネル君遅い! ハティ待ちくたびれちゃった!!」
隣の部屋から大きなバスケットを抱えて、危ない足取りのハティが出てきた。
どうやら大きすぎて前が見えないらしい。
それを見たセネルがバスケットを持ってやる。
「所でハリエット、ウィルはどこに行ったんだ?」
「パパなら海岸に魔物の生態調査に行ったけど?」
「海岸だな」
行くぞ、皆!! とバスケットを机に置いたセネルが玄関に向かい、扉を開けようとした時だった。
ゴッと鈍い音と共に、ドアが開いた。
「ただいま、ハリエット」
「お帰りなさい、パパ」
肩から鞄を提げたウィルが帰ってきた。
「皆も揃っているな、ん? セネルどうしたんだ」
「いや、なんれもない」
鼻を押さえながら、恨めしそうにウィルを見るセネル。
どうやら開いたドアに痛い1撃を貰ったらしい。
「レイナード、1人で出歩いては危険だ」
「そうですよ、いつもそう言ってるあなたが出歩くなんて珍しいですね」
クロエとジェイが口を揃えて言う。
「いや、珍しいタコエッグが歩いていてな」
「タ、タコエッグ……?」
タコエッグ、あの白い身体に黄色い頭(?)が乗ったモンスターだ。
簡潔にまとめるとこうだ。
魔物調査の為に1人で海岸に向かったウィルは、いつように時間を忘れてツイ調査に熱中。
そこに珍しいタコエッグが通り、追いかけて不思議の国に迷いこんだ。
……らしい。
「って、そんなわけないだろ」
話の流れが変なので、セネルが、まだ痛いのか鼻をさすりながら突っ込む。
確かに、明らか変だ。
「シャーリー違うだろう。話を隠蔽してどうする」
いつの間に話し手がウィルからシャーリーにチェンジしていた。
「メルヘンにした方が読み手は飽きないと思って」
「ウィルにメルヘン要素はいらないと思うが」
クロエが苦笑交じりで言う。
セネルはブランコで有名な某アルプスアニメの
オープニングみたいに笑いながらスキップしているウィルを想像してしまった。
横にはヤギではなく嬉しそうに飛び跳ねているタコエッグだ。
うぇ、と思わず吐き気がして口を押さえるセネル。
「何を想像しているんだ、クーリッジ」
「いや、少しメルヘンにし過ぎただけだ」
少しではないだろう、かなり気持ちが悪い。
「正しくまとめるとこうですね。海岸で珍しいタコエッグを見かけ、調査していた」
「なんじゃ、ウィの字らしいのぉ」
的確なジェイの説明にモーゼルも理解したようだ。いつものようにクカカカカと笑い出す。
「あのタコエッグは凄かった。魔物に囲まれた俺を助け、おまけに身体は七色に光り輝き、
自分より大きい魔物も1撃KO! 強大化すれば他の魔物よりずっと大きかった……」
「囲まれたのかよ」
特定の人を除き、呆れモードの1同。
「すごいわねぇ〜、そのタコエッグちゃんはと〜っても強いのねぇ〜♪」
「あぁ、あの艶、凛々しさ。今まで見たタコエッグの中でも上位の素晴らしさだった」
グリューネさんとウィルが盛り上がってる側で、クロエがボソっと呟いた。
「聖爪術」
「せ……! でも流石魔物に聖爪術は」
はっとしたシャーリーだが、すぐさま考え直す。
「魔物だって爪術は使えますよ。ウィルさんが言ったことが本当なら……」
「いや、魔物が聖爪術だぞ。ってかタコエッグは爪術使えないだろ」
「進化したのかもしれん、聖爪術は男のロマンじゃ」
「でも、ウィルっちを助けてくれたんだし悪い魔物じゃないんじゃないの?
なんなら仲間にスカウトしちゃう? モーすけより強いかも」
「それは良い考えですね、そうしましょう」
「待てや、ワレら」
「何ですかモーゼスさん、今は大事な会議(?)中ですので後にしてください」
「そうだよモーすけ、文句言う時間があるならパーティの存続をかけた戦いに向けて
少しでもLVを上げておくべきだね」
「ワイが戦うこと決定かぃ」
なんだか話がそのタコエッグをモーゼスの代わりに仲間にしようと言う流れになってきた。
モーゼスはタコエッグに勝てるのか!?
「でもその前にそのタコエッグの居場所を聞かないと駄目ですね」
「任せてください、ウィルさん〜」
「譲ちゃんまで!?」
情報を聞き出す役を自ら立候補したのはシャーリーだった。
すぐに、盛り上がってるウィルの元へ。
「腹を括った方が良さそうだな、モーゼス」
「セの字、ワレは少しは止めようって気はないんか」
「悪いなモーゼス、俺は自分が可愛い」
くぅ、と涙を拭いながらセネルはモーゼスの肩に手を置く。
さらばモーゼスと顔に書いてあったり無かったり。
このパーティには常人はいないのか!!
「大丈夫だシャンドル」
「クッちゃん〜クッちゃんだけじゃワイを心配……」
「戦って勝てば良い、そうだろう」
「煤i ̄□ ̄ )!?」
クロエはスポーツマンシップに忠実だった。
エキサイティングだ、クロエ(意味不)
するとそこに、事情を説明したのかシャーリーが戻ってきた。
「ウィルさんが直々に案内してくれるそうです」
「皆、タコエッグの生態について聞きたいらしいな、任せておけ」
なんて説明したんだ、シャーリー。 Byセネル
「では、出発しましょう」
「頑張れシャンドル、お前なら多分きっと大丈夫だ!」
「クロエ、お前のその自信はどっからきてるんだ」
「クーリッジ、その言い方はシャンドルに失礼だぞ」
「はいはい、そこのお二人さん置いてっちゃうよ〜」
慌しくばたばたと出て行く一同、そこにぽつりと残されたハリエット。
「もう、ハティ1人でパーティするからいいですよーだっ!!」
開けっ放しにされたドアに向かって舌を出しながら怒り出すハリエット。
今日1日はまだ、始まったばかり。
〜後書き〜
何とか約束を守れました、津名でございます。
大分当初と話の流れが違ってしまいましたが……
もう1つのパターンは折角なので近い内に拍手で公開予定です。
もう1つのパターンが気になる方、興味がある方は拍手でどうぞ。
でもインターネット使えるPCがフロッピー挿入できないのでどうなるかは分かりませんが。
でも、公開はしますので。
ついでに1言も是非(爆)
作品自体はテンポが速いかなぁと思います。
こう言うのを「無茶苦茶」って言うんでしょうかね(爆)
ハローウィンってのが関係ないような気がしてならn……(その通り)
題名の横の部分、「―これもあなたの為なのよ―」は津名の思いを込めてみました。
なにがあなたの為なのか凄い意味不明ですが、頭に浮かんだフレーズをそのまま使用。
結構ゴロが良くて結構気に入ってますw
Lって難しいですね、あだ名といい、モーゼスの喋り方といい……
でも楽しかったですが、機会があれば是非(^^)
あとボサボサ頭の学者(声優)人気ですが、津名は体験済みでございます。
あれは凄いですよ、まぁ出番順とかも関係あるんでしょうが。
また機会があれば部玉さんと行きたいですねぇ……(爆)
ここまで読んでくれた方々、ありがとうございました。
感想は掲示板、拍手等で受付中でございます(^^)!
UP時期:2005/11/30