ティトレイが遣り残した事

ユリスの領域。
言わずと知れたリバースのラスダンである。





まぁ、この話にはユリスもラスダンも関係なかったりしますが。(読み損だね)


* * * * * * * * * * * *


 ある日、マオが1人で歩いていると、道の脇にひっそりと咲いている花をじーっと見ているティトレイの姿が目に入った。
 悩ましげな表情、まっすぐな視線を道の脇に咲いてある花に向けているティトレイ。
 一体何故そんな一途な視線を花に投げかけているのか。

「どうしたのティトレイ、花なんか見て」

 あまりに一途な視線を向けているので、好奇心が心をくすぐったマオは、思い切って話しかけることにした。

「ん、マオか。 いや〜、この花姉貴に似合いそうだなーと思ってな」

 マオに気が付いたティトレイは視線を上げ、豪快に笑いながら答えた。

「でた、ティトレイのシスコン!!」

「おまえ、その言い方やめろよな。姉思いと言え、姉思いと」

「まぁ、ティトレイのシスコンは置いといて。確かにその花、セレーナさんに似合いそうだネ」

 置いとくなよ、と1人喚いているティトレイをよそに、マオも道の脇にある花に目を向けた。

「あ、桔梗ですね」

「「!?」」

 2人が異様に驚く中。いつの間に来たのか、アニーはひょっこりとマオの後ろから顔を出した。

「この花桔梗って言うんだ〜 紫が綺麗だネ♪」

「桔梗の根っこは薬用に用いたりするんです。花は観賞用に、あと秋の七草とも言われているんですよ。
 花言葉は清楚な美しさ、気高い、誠実な愛ですね」

「へぇ……アニーは詳しいな」

「ちゃんと中身が詰まっていますから」

 にっこりと笑いながら話すアニー。流石はお医者さん。
 どこの中身かは聞かない方がよさそうだネ……とマオが心の中で思う中、
 『詰まっている』の意味が分からないだろう人は、アニーの笑顔につられながら遠い目をし始めた。

「清楚な美しさ……おまけに響きもいい。姉貴、元気かなぁ……」

「でた、ティトレイのシスk……」

「樹砲閃」

「うわっ!」

 マオが全て言い終わる前にティトレイの樹砲閃が、おしとやかに炸裂した。
 それを間一髪のところで避けたマオはティトレイに噛みつかんばかりにくってかかった。
 樹砲閃って避けられるのか……と密かに思う作者。

「なにすんのさティトレイ、か弱い僕を殺す気!!?」

「マ〜オ〜 おまえ俺に喧嘩売ってるな、売ってるだろ、売ってるよな?」

 口の端を引きつらせつつ、がしっとティトレイがマオの頭を鷲掴みにする。
 ティトレイはそうとうご立腹だ。

「何言ってんのさ、うわ〜 ティトレイが虐めるー ヒルダに言いつけてやる!!」

 ティトレイに頭を掴まれつつも、必死の抵抗を続けるマオ。

「どーしてヒルダの名前が出てくるんだ、この口かぁ〜!!」

 ティトレイはマオのホッペを思いっきり左右に伸ばし始めた。
 そんな光景を、そろそろ忘れられていると思われるアニーが苦笑しながら見ていた。
 しかし、アニーは見ているだけで、手を出す気配がまるでない。
 時々マオが、だずけてーとアニーに叫んでいるっぽいが、アニーは控えめに手を振るだけだった。

「……一体なにをしているんだ?」

 すると、アニーの後ろから物静かな声が聞こえた。
 この声を聞いたマオの表情がぱぁっと明るくなる。

「ヴェイグ〜!!」

 マオはティトレイの鳩尾(みぞおち)にトンファーを叩き込むとダッシュでヴェイグの元に向かって走りだす。

「ティ、ティトレイさん?」

 生きていますか〜? と小声で心配そうに呼びかけるアニー。
 しかし、距離にして1mは離れているだろう。心配は社交指令ですか……
 トンファーをもろに受けたティトレイは悶え苦しんでいた。
 鳩尾は痛いよね……と他人事の作者。

「……何をしているんだ?」

「ティトレイいじりだヨ」

「ティ……新しい遊びか?」

 なんて変な遊びなんだ。と心で思いながらヴェイグは横目で悶え苦しんでいるティトレイを見た。
 苦しそうだった。

「…………マオ、ユージーンが呼んでいたぞ」

 ヴェイグは、心の中で頭を抱えつつ、いつもの無表情で宿屋のほうを指差した。
 宿屋では、ユージーンが留守番をしているのだ。

「ユージーンが? なんだろー」

 なにか悪いことしたけ? と悩みつつ、不思議そうにしながらもマオは、宿屋へと向かって歩き出した。
 どうやらマオに心辺りはないらしい。
 そんなマオの様子を見たアニーが不思議そうにヴェイグに尋ねた。

「ヴェイグさん、本当にあの人が探して……?」

「……嘘も方便、だ」

「う、嘘ですか……」

 結局ティトレイに同情したヴェイグの助け舟だった。
 結構優しいところのあるヴェイグである。

「まぁ、浜辺で殴りあった仲ですしね」

「あれは人生最大の汚点だ……」

 きっぱり言い切ったヴェイグに、元気を取り戻しつつあるティトレイが抱きつく。

「友よ〜〜〜〜」

「離れろ、暑苦しい」

「仲いいですね、羨ましいです」

 二人の仲を見たアニーは、 わざとらしく 羨ましそうにつぶやく。

「……アニー、お前は羨むところを間違えている」

 抱きつかれて、うっとおしそうにしつつも、すぐさまヴェイグが間違いを指摘する。
 何気に手が剣に伸びつつある。

「そうだろそうだろ、羨ましかろう」

 あれぞ男の友情! 等と言いながら、あっはっはっは。と笑いながら調子に乗り始めるティトレイ。
 そろそろ色んな意味で危ない。

「俺らは夕焼けバックに浜辺で殴りあった仲だもんなー 青春青s……」

「裂破衝」

「ぐはっ!!」

 しつこいティトレイにヴェイグの裂破衝が華麗に炸裂。
 これは、調子に乗りすぎたティトレイが悪い。
 なんだかこの話ティトレイやられ過ぎじゃない? と密かに思う作者。

「……アニー、あとは頼んだ」

「狽ヲ”!!?」

 ヴェイグは、ピーチパイが俺を呼んでいる……と呟くと、そそくさとその場を後にした。
 取り残されたアニーは困った。側には死にそう(?)な人が1名。
 しょうがないので、アニーは一応、応急処置をすることにした。
 ちょうど近くに咲いていた桔梗の花が目に入ったので無表情で引っこ抜く。

「あ、アニーさん?」

 危険を直感で感じ取ったティトレイは、動かない身体を引きずりつつ、嫌な汗をかき始めた。
 そんなティトレイの様子を知ってか知らずか、ティトレイの横でアニーはブチブチと桔梗の花をむしりとる。

「なんですか、ティトレイさん?」

「アニーは一体何してるのかな〜と……」

「さっきも話しましたけど、桔梗の根っこは薬になるんです、
 今薬を作ってますからじっと待っていてください」

 冷静に言い放つアニー。
 しかし、多分笑っているのだろう。
 アニーの声は凄くウキウキだった。

「大丈夫ですよ、正真正銘のちゃんとしたお薬ですから。ちょっとジャリジャリすると思いますけど」

「洗えよ」

 『ジャリジャリ=土』と中身の少ない頭で判断したティトレイは、速攻で突っ込む。
 アニーはアニーでそんなティトレイの話は無視して作業を続けている。

「はい、これで大丈夫です。ちょっとえぐ味が強いですけど
 良薬口に苦しっていいますし、全然問題ナシですよ♪」

「あのー、アニーさん? 人の話を……」

「キャ〜、ティトレイさんってチャレンジャー♪」

「狽゙ぐっ!!!?」

 人の話を聞けよ。と言うティトレイの悲痛な叫びを完璧無視して、
 アニーは無理やり桔梗の根っこ(土付)ティトレイの口に押し込んだ。

「桔梗の根っこはサポニンを多く含むことから生薬として利用されているんですよ」

 ティトレイの口に根っこを押し込むとアニーは桔梗について得意げに話し始めた。

「狽ヲぐっ、ジャリ、まずっ、おぇっ!!!」

 根っこを運悪く噛んでしまったティトレイは、不意のえぐ味に思わず根っこを吐き出す。

「まぁ、それは良かったです。桔梗の花はえぐ味に強いものが良質とされているんですよ」

「う、嬉しくないのは俺だk……がく」

 そう言い残すとティトレイは大げさに地面に突っ伏した。





 前略 姉貴へ
 俺は今日、とある町で綺麗に咲いている花を見つけた。
 その花は桔梗という名前の紫色をした、花言葉は清楚な美しさ。
 まさに姉貴にぴったりな花だと思った。
 ペトナジャンカにも咲いているといいな。
 俺は元気に毎日頑張ってるから心配しないでください。




 あぁ、でもどうせなら最期は姉貴に看取られて逝きたかった……




 ティトレイの遣り残した事。
 それは、『姉貴に看取られる=姉貴の膝枕で死にたかった』だった。(無理矢理だね)
 ティトレイは気絶する時までシスコンだった。



〜おまけ〜

 ティトレイが倒れた後、宿屋にて。

「ティトレイさんは大げさです、こっちは親切にお薬を作っただけなのに」

「…………………」

「桔梗の根は、鎮痛などの効能が本当にあるんですよ」

「…(溜息)…どうしようもない馬鹿ね」

「あ、ヒルダさんもそう思います?」

 アニーはヒルダにひたすら愚痴っていた。(爆)




〜あとがき〜
はい、今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。
こんなしょうもない駄文に時間を使っていただけるなんてありがたい限りです。
出来は良くないと自負しております(^^;)
今回はティトレイですね、やられっぱなしで酷い扱いを受けておりますが……
何気にティトレイとアニーな感じですが……
アニーが居ないとこの話は成り立たないですしね、偶然です。(きっぱり)
まぁ、ぶっちゃけこの話の発端はまた凄いのですが、コナンを見ていてですね、スペシャルで新一が出ていました。
そこで私の頭の中には『犬夜叉』が浮かんだわけです。我ながら単純……
新一=ティトレイ=犬夜叉=桔梗ってな感じで。
ぶっちゃけますとティトレイに話、内容はどうであれ『桔梗』って言わせたかっただけです。(爆)
これを土台に色つけたらこんな悲惨な話に……
これじゃあ“悲劇”ってより“喜劇”。
しかも、始めの目的“ティトレイに桔梗と言わせる”を果たせてないし!
(文中ティトレイは桔梗なんて1言も言ってないよ/爆)
すいませんでした!!!(土下座)

ちなみに桔梗は本当に薬に使われたりしているらしいですよ、飲んだ事ないですが。
1日3グラムが適当らしいですが。
ティトレイは明らか摂りすぎです。
では、本当に読んでくれてありがとうございました!!


UP時期:2005/10/8